コカミドプロピルベタインは、ココナッツを原料とした両性界面活性剤です。
単体でも洗浄性や起泡性はありますが、通常は陰イオン界面活性剤と併用する事で起泡・洗浄力を向上させ、また泡の粘度を上げるなど、泡質の改善に効果があります。
また、泡立ちの悪いアミノ酸系の洗浄成分と併用することで、アミノ酸系のシャンプーの泡立ちを向上するためにも使用されます。
その他、ラウリル硫酸Naなどの刺激の強い洗浄成分と組み合わせることで、刺激を緩和する作用があるほか、
コカミドプロピルベタインに陰イオン界面活性剤、カチオン化高分子、グリシン型両性界面活性剤が併用されている場合は、コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用を目的として配合されていると考えられます。
コカミドプロピルベタインの特徴
ココナッツを原料としたアミノ酢酸ベタイン型に分類される両性界面活性剤です。
両性界面活性剤とは、水に溶けた時に陰イオン(アニオン)界面活性剤と陽イオン(カチオン)界面活性剤両方の性質を持ち、アルカリ性の場合は陰イオン、酸性の場合は陽イオンとして働きます。
両方の作用を持つ代わりに、界面活性剤としての働きは少し弱く、他の界面活性剤の補助、あるいは緩和剤として添加されていることが多くなっています。
シャンプーなどに配合される場合は
・陰イオン界面活性剤との併用による起泡・洗浄力の向上
・陰イオン界面活性剤の増粘
・陽イオン界面活性剤の可溶化
・強陰イオン界面活性剤の刺激緩和作用
・コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用
などの目的で使用されます。
陰イオン界面活性剤との併用による起泡・洗浄力の向上
コカミドプロピルベタイン自身にも洗浄性および起泡性を有していますが、通常は、単独で配合されることはなく、陰イオン界面活性剤と併用することによって洗浄力の増大、キメの細かいクリーミーな泡質や泡の安定性を向上させます。
陰イオン界面活性剤の増粘
シャンプーやボディソープなどの泡は適度な粘度があった方が感触や使用時の扱いが良くなります。
コカミドプロピルベタインは、陰イオン界面活性剤水溶液の良好な増粘剤として働くことから、増粘目的でアニオン界面活性剤と併用されます。
また、特に、アミノ酸系界面活性剤を使用している場合には、粘度を高めることが難しく、陰イオン界面活性剤、コカミドプロピルベタインと非イオン界面活性剤を適切な割合で処方することで粘度を適切に向上させることができます。
陽イオン界面活性剤の可溶化
コカミドプロピルベタインは陰イオン界面活性剤と複合体を形成し、通常であれば混ざり合いにくい、陰イオン界面活性剤水溶液中に陽イオン界面活性剤を混ぜ合わせることが可能になります。
従って、これら3種類の界面活性剤が一緒に配合されている場合は、陽イオン界面活性剤を適切に混ぜ合わせるために使用されている可能性が考えられます。
強陰イオン界面活性剤の刺激緩和作用
ラウリル硫酸Naやオレフィン(C14-16)スルホン酸Naなど頭皮などへの刺激が強い陰イオン界面活性剤(市販されている多くのシャンプーの多くに使われている洗浄成分)と併用することで、
タンパク質への吸着量が最小となることで、陰イオン界面活性剤による皮膚や毛髪への刺激を低下・緩和させることから、多く製品で陰イオン界面活性剤と一緒に配合されています。
コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用
シャンプーの主な洗浄成分である、陰イオン界面活性剤は、コカミドプロピルベタインとカチオン化高分子と呼ばれる成分との相互作用により、シャンプー希釈時に、ある濃度においてコアセルベーションと呼ばれる現象をを起こすことが知られています。
このコアセルベーションによって分離した溶質の多い状態は、洗浄機能とコンディショニング機能を合わせ持つ複合体で、コアセルベートと呼ばれており、
コアセルベートはシリコンや油性成分を取り込み、それらが毛髪表面に吸着することで、すすぎ時に毛髪へ滑らかさを付与し、ヘアコンディショニング効果を発揮します。
実際のシャンプー場面では、シャンプーを始めた泡立て時には洗浄作用が発揮され、その後、汚れをすすぎ流す過程で陰イオン界面活性剤の濃度が低下し、コアセルベートが生成され、生成されたコアセルベートが毛髪に吸着し、コンディショニング効果を発揮します。
コアセルベートは、陰イオン界面活性剤とコカミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤に加えてカチオン化高分子の3成分によって生成されます。
ただし、、両性界面活性剤であるコカミドプロピルベタイン単体で配合するより、コカミドプロピルベタインとココアンホ酢酸Naなどのグリシン型両性界面活性剤を併用することで、コアセルベート生成量がさらに増加することがわかっています。
コアセルベートは、陰イオン界面活性剤とカチオン化高分子の相互作用のみでも生成されますが、コカミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤を加えた3分子の相互作用とすることでコアセルベート生成量が増えるため、通常この3種類を併用することが一般的です。
ということで、陰イオン界面活性剤、カチオン化高分子、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤(コカミドプロピルベタインなど)にグリシン型両性界面活性剤が併用されている場合は、コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用を目的として配合されていると考えられます。
分類:帯電防止剤、ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤、洗浄剤、起泡剤、親水性増粘剤
英:Cocamidopropyl Betaine
コカミドプロピルベタインの安全性
コカミドプロピルベタインは30年以上の使用実績があり、シャンプーなどの洗い流す様な製品であれば安全性に問題は無いと考えられます。
ただし、日常的に使用する機会が多い理容師、美容師などで皮膚炎などがある場合には皮膚トラブルを発生する可能性があるので注意が必要です。
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